住む世界が違いすぎる。

 わたしなんて恋愛ゲームですら課金しないでやってるのに。

「それは来栖先輩の近くに自然にお金持ちが集まるからです。この世界の大半の人は一般庶民なんですよ」

「うちがそんな特別な金持ちって感じはしないけどな」

「お小遣いとかはいくらなんですか?」

「基本カードだからよくわかんないな」

 自分がどれだけのお金を使っているのかも把握してないのかな。

「正直にいうと、おれは最初から遥にプレゼントするつもりだったんだよ。お近づきの印ってやつでさ、これまでの女はそうするとみんな喜んでくれたんだけどな」

 不器用な人なのかな、来栖先輩は。お金でしか関係を築けないだなんて。
 これまでの女という表現からはたくさん遊んできたっぽいけど、お金での繋がりだならすぐにダメになるのかも。

「プレゼントなんかしなくても、友達や恋人にはなれますよ。大事なのはものよりも気持ちですから」

「遥は大人だな。いいお母さんになりそうだよ」

 わたしは苦笑するしかなかった。
 こんなひどい人間、結婚なんかできるわけがない。

「ところで、この前の質問、まだ答えてもらってないんですけど」

「この前の質問?」

 わたしなんかに親しくしてくれてる理由。来栖先輩はデートをしてくれたら教えてくれるといってたけど。

「あれか。あんなの、どうでもよくないか?」

「どうしても気になるんです」

 どんなことでも、わたしは受け入れられる。だって橘先輩ほどショックを受けるような理由はないはずだから。

「やっぱりさ、なにかしてあげないとおれの気がすまないな。どうだ、遥、行きたいところなんかはないのか?ものとして残らないなら気を使う必要もないだろ」

 行きたいところ。そう言われてひとつ、思い付いた場所があった。

「……映画館」

 橘先輩とも行ったところ。
 同じ場所に行けば記憶が上書きされて、あれこれ思い悩まなくてもいいのかもしれないと思った。