ファッションビルというものにわたしは無縁だった。

 洋服にはあまりこだわりがないし、近所の激安ショップみたいなところでも充分にいいものが手に入るから。
 高いものを買うのはおじさんとおばさんの負担にもなってしまうし。

 そんなわたしがこの日、来栖先輩から洋服を買いにいくから付き合ってほしいと頼まれたので、街の中心部にあるファッションビルを訪れていた。

「こういうところには来たことないっていってたっけ?」

「洋服は近くのお店で買うので」

 値段の違いは調べなくてもわかる。
 わたしのお小遣いなんかじゃ手が出ないくらい。

 普通の女子は他人と比較することで満足感を得たりしているんだろうけれど、わたしにはそういう感覚はない。

「それはもったいないな。服選びってさ、いろんな店をまわる楽しさってのもあるだろ。お気に入りって常に更新されたいくものなんだよ」

「わたしの場合、目が見えませんから」

「それもそっか。悪い。おまえはデリカシーがないってよく言われるんだよな」

「いえ」

「それじゃあ、謝罪ついでに服を買ってやるよ。遥が選べないなら、おれが選んでもいいよな」

「いいですよ。ここって高いんですよね」

「大丈夫、気にすることないって。金ならいくらでもあるんだから」

 こんなところで高い買い物をしたら、おじさんとおばさんを不安にさせてしまう。誰に買ってもらったの?怪訝そうな二人の顔が思い浮かぶ。

「そんなに気を遣うものか?高校生にもなれば彼氏とかからプレゼントをもらったりするだろ」

「普通の高校生はもっと質素だと思います。来栖先輩が特別裕福なんですよ」

 来栖先輩の親は医者。しかも他には兄弟はいないらしい。
 それならきっと来栖先輩はたくさんのお小遣いをもらっているに違いない。

「そうかな?おれの知り合いの女子なんて、中学のころから数十万のアクセサリーなんか身に付けていたぞ」