あの日をきっかけにして、わたしは来栖先輩とよく話すようになった。
来栖先輩のほうから声をかけてくれたから。通学路なんかも一緒に歩いたりした。
一年生の教室にまできてお昼ご飯を一緒に食べようと誘われたときは本当に驚いた。
周りの反応を感じる限り、来栖先輩も橘先輩同様、イケメン枠に入っているらしい。
二人続けてイケメン先輩と付き合っている、そんなやっかみの視線を感じるけど、わたしと来栖先輩は恋人同士というわけじゃない。
友達らしい友達がいないから、直接伝えることはできないけれど。
まあ、誤解されたままでも別によかった。いまのわたしにとっては違う方向に意識を向けることが大事だから。
今日もお昼は来栖先輩と一緒に食べることになった。
もう七月に入っているけど、夏の暑さはまだそこまでしゃなかった。日差しも柔らかくて、外でお弁当を食べるのには最適だった。
校舎とグラウンドの間は遊歩道みたいに整備されていて、そこのベンチにわたしたちは座った。
もともとはわたしは通学路のコンビニでお昼ご飯を買っていたけど、いまはお弁当。
おばさんが目の見えないわたしを気遣ってくれてるから、そうなった。おにぎりやサンドイッチが多い。今日はおにぎりだった。
「お、美味しそう。ちょっとくれよ」
来栖先輩がおかずのなにかを箸でつまんだのがわかった。
「うん、甘い。おれは卵焼きは甘いほうが好きなんだよ。あ、代わりにこれやるよ」
来栖先輩がわたしのお弁当箱になにかを入れた。
さっそくわたしはそれを食べてみる。甘めのソーセージだった。
たぶん、タコさんにカットされたもの。高校生のお弁当にタコさんウインナーだなんて、なんかかわいい。
「あ、いま笑っただろう」
「す、すいません」
「いや、別にいいんだけど。いまも味覚は子供のままなんだよな、おれ。ご飯の代わりにお菓子とか食べたりするんだよ」
「親に怒られたりしませんか?」
「ないかな。親はおれの好きなようにさせてくれるよ。甘やかされてるっていったほうが正しいのかもしれないけどな」
来栖先輩のほうから声をかけてくれたから。通学路なんかも一緒に歩いたりした。
一年生の教室にまできてお昼ご飯を一緒に食べようと誘われたときは本当に驚いた。
周りの反応を感じる限り、来栖先輩も橘先輩同様、イケメン枠に入っているらしい。
二人続けてイケメン先輩と付き合っている、そんなやっかみの視線を感じるけど、わたしと来栖先輩は恋人同士というわけじゃない。
友達らしい友達がいないから、直接伝えることはできないけれど。
まあ、誤解されたままでも別によかった。いまのわたしにとっては違う方向に意識を向けることが大事だから。
今日もお昼は来栖先輩と一緒に食べることになった。
もう七月に入っているけど、夏の暑さはまだそこまでしゃなかった。日差しも柔らかくて、外でお弁当を食べるのには最適だった。
校舎とグラウンドの間は遊歩道みたいに整備されていて、そこのベンチにわたしたちは座った。
もともとはわたしは通学路のコンビニでお昼ご飯を買っていたけど、いまはお弁当。
おばさんが目の見えないわたしを気遣ってくれてるから、そうなった。おにぎりやサンドイッチが多い。今日はおにぎりだった。
「お、美味しそう。ちょっとくれよ」
来栖先輩がおかずのなにかを箸でつまんだのがわかった。
「うん、甘い。おれは卵焼きは甘いほうが好きなんだよ。あ、代わりにこれやるよ」
来栖先輩がわたしのお弁当箱になにかを入れた。
さっそくわたしはそれを食べてみる。甘めのソーセージだった。
たぶん、タコさんにカットされたもの。高校生のお弁当にタコさんウインナーだなんて、なんかかわいい。
「あ、いま笑っただろう」
「す、すいません」
「いや、別にいいんだけど。いまも味覚は子供のままなんだよな、おれ。ご飯の代わりにお菓子とか食べたりするんだよ」
「親に怒られたりしませんか?」
「ないかな。親はおれの好きなようにさせてくれるよ。甘やかされてるっていったほうが正しいのかもしれないけどな」