「もっと遥ちゃんは自信を持ったほうがいいよ。実際に橘先輩から告白されたんだし」

「……それが一番の謎なんだよね」

やっぱりどうして、という疑問が消えることはなかった。
もし仮に橘先輩がわたしみたいな地味目な女子がタイプだったとしても、これまでまともな接触なんて一度もなかったから、好かれるようなタイミングもなかったはずだけれど。

「理由は聞いてないってこと？」

「なんていうか、とにかくわたしを好きになったということくらいしか言われてなくて」

「言うのが恥ずかしいってことなのかな？　例えば一目惚れとか？　校舎のどこかですれ違ったときに」

「だったら、そう伝えるとは思うんだけど」

それに、橘先輩だったらすれ違っただけでも気づくと思うんだよね。周りも騒ぐはずだし。

「小学校や中学校も別のところだったよね」

「うん。近くに住んでいるわけでもないから、普段会うこともないんだけど」

もしも近所に住んでいるのなら、とっくにそういう噂は耳にしているはずだし、通学路でも見かけたことはなかった。

「かわいい一年がいるって、誰かから聞いたんじゃない？　それでこっそりと陰のほうからチェックしをたら好きになってしまった。それなら、恥ずかしくて正直に言えなかったという気持ちもわかるけど」

「そんなはずないよ。梨子ちゃんならともかく」