わたしは放課後の屋上に橘先輩を呼び出すことにした。告白されたところで話を聞くのが一番かなと思ったから。

 橘先輩への連絡は倉田先輩にお願いした。お昼に誘ってくれたのでそのときに。

 屋上で一人で待っているときは、来てくれるかどうかわからなくてとても不安だった。

 出入り口のドアが開いたときも、その声を確認するまで安心できなかった。

「篠崎さん……」

 何日かぶりに橘先輩の声を聞いて、わたしは胸を撫で下ろした。

「ユマから聞いたんだ、きみがここで待ってるって」

「ユマ?」

「倉田ユマ。知ってるよね」

 ああ、倉田先輩の名前。そういえば苗字しか知らなかった。

「もっと優しくしてやってくれと言われたよ。あいつがあんなことを言うなんて、きみたちは想像以上に親しかったんだね」

「いろいろと相談に乗ってくれたんです」

「ぼくのことで?」

「それはわたしの口からは」

 気のせいかな。橘先輩はいつもと違う気がする。

 うまくは表現できないけれど、最初に会ったときよりも刺々しいというか。

 ピリピリしたものを肌で感じる。
 声にも張りがない。やっぱりあのファミレスでの出来事が影響しているんだよね。

 どんなことが原因なのか、わたしは知りたい。

 そのために自分の過去をおじさんとおばさんから聞いてきた。
 いまのわたしなら、決して好奇心だけで橘先輩の過去を知りたいわけじゃないということが伝わるはず。

「あ、あの、実は、わたし、聞いてもらいたいことがあるんです」

「きみがぼくに聞きたいことごあるわけじゃなくて?」

「聞いてもらいたいって言うか、そうですね、本当は橘先輩の過去が知りたいんです。この前、和久井という人の言ってた話とか、いろいろです。でも、わたしになにもない状態ではダメで……前にいいましたよね、記憶の一部がないって、そういうままではそういうの聞いちゃいけないと思ったんです」