けど、子供たちまで亡くなったと聞いた以上、わたしのなかにはぬぐい去ることのできない後悔が。子供たち?

 その瞬間、わたしはあのときの出来事の意味がようやくわかった。

「……じゃあ、あの人はまさか」

「あの人?」

「小学生のときに、ある人から突然話しかけられたことがあるの。帰宅途中のことだったんだけど、その人は見たことのない中年くらいの女性で、わたしの腕を後ろからつかんで、怒ったような口調で話しかけてきたの」

 あなたのせいよ、あなたのせいでうちの子があんなになって。

 それからも叫ぶような感じで言葉を続けたけれど、わたしはほとんど聞いていなかった。

 殺気のようなものまで発していて、命の危険を感じていたから。

 騒ぎを聞き付けた大人が駆けつけた来て、どうにか無事に帰ることができたけれど、その出来事はトラウマとしてわたしの記憶に深く刻み込まれた。

「きっと、あの人は亡くなった子供の親だったんだ。どこかでわたしのことを調べてきて、文句をいいに来たんだと思う」

「そんなことがあったのか」

「それは一度だけ?」

 わたしはうなずいた。その後、その中年女性はわたしの前に姿を現すことはなかった。

「なにもなくてよかったが、正直、あの事故のことを知っていると、そういう気持ちになるのも理解できる気がするな。理屈ではわかっていても、納得できないことっていうのは確かにあるからな」

「そうね。わたしたちも遥ちゃんが同じような状況になったら、似たことをするのかもしれないわね」

 ここまで話を聞いてみて、わたしには一つ不思議なことがあった。

 それだけ大きな事故だったなら、わたしもどこかで耳にしてもおかしくないような気がする。

 確かにわたしはニュースなんかは一切チェックしないし、新聞も読まない。スマホはほとんどゲーム専用と化している。