倉田先輩と話し合った直後、わたしはおじさんとおばさんと過去について話し合う決意をした。

 橘先輩は過去になにかを抱えている。
 わたしはそれを倉田先輩から聞き出そうとしたけど、結局、自分でなんとかしないといけないと気づかされた。

 わたしは橘先輩の過去を知りたい。
 でも、いまのままじゃ全然ダメ。

 わたし自身が過去を取り戻さないといけない。過去から逃げている人間が他人の過去を詮索することは許されないと思う。

 例え、それがどんなものであったとしても、わたしは逃げない。そう決めた。

 正直にいうと、わたしのなかにはまだ不安が残っている。
 両親が亡くなった事故について嫌な予感があるから。

 すごく前に一度だけおじさんとおばさんにどういう事故だったの?と聞いたことがある。
 そのときのおじさんとおばさんの反応はなんだか、気まずそうな感じだった。

 もしかしたら、わたしの両親は加害者だったんじゃないかな?そんな疑念がある。

 事故というのは亡くなったほうが悪い場合だってあるから。
 たとえば飲酒運転とか。
 それでお互いが亡くなったとか。
 それを思わせるような出来事も過去にはあったから。

 そうだとしたら、わたしは耐えられるかな?
 逃げないと自分の心に誓っても、やっぱり、動揺をすべて消し去ることはできない。

 夕食後、おじさんとおばさんに大事な話があると告げてリビングのソファーに座ったとき、わたしの膝は間違いなく震えていた。二人も同じようなものだったのかもしれない。

「兄さん夫婦の事故の真相が知りたい、か」
 
「うん。もうそろそろ知らないといけない時期かなと思って」

 二人に本当のことを言うわけにはいかない。橘先輩のことをちゃんと説明するような自信もないし。