そういうわけで次の休日、わたしは橘先輩と街の中心部に出かけることになった。

 正直、いろいろな緊張が重なっている。

 まずはこれが基本的にデートであるということ。わたしにはそんな経験は当然、一度もない。

 イケメンとの妄想やゲームのキャラクターとならしたことがあるけれど、それがまさか現実になるなんて。

 コンプレックスプランで視力を失っていることも不安だよね。
 自宅周辺のことならそんなに慌てることもないけど、ほとんど歩いたことがないところだと日常の感覚ではどうしようもなくなる。

 交通量や人も多いだろうし、道も複雑にできているはず。

 それと、もしもわたしと橘先輩二人だけのところを学校の誰かに見られたら、という心配はやっぱりある。

 わたしは目が見えないことをみんな把握しているはずだから、あからさまな文句を言われることはないと思うけど。

 それでも、楽しみな部分があることも否定はできないかな。わたしにとってはデートそのものが憧れだったから。

 橘先輩が自宅にわたしを迎えに来たとき、おじさんとおばさんはとても驚いた顔をしていた。

 おばさんからは彼氏なの?と小声で聞かれたけど、わたしは何も言わずに家を出た。

 それだけですごい恥ずかしかった。おじさんは玄関先まで出てきて橘先輩のことをじろじろ見ていたし、ああ、本当の親ってこういうものなんだろうなという感じがした。

 住宅街の端のほうにある駅から電車に乗って、わたしたちは中心部まで移動した。

 休日だから電車は結構混んでいるようで、わたしたちが座れる席はなかった。
 つり革をつかんで、ドアの付近に立つことになった。わたしは目が見えないから、少しの揺れでも体が動き、その度に橘先輩は腕で支えてくれた。