その日、自宅に帰ると、わたしはすぐに自分の部屋のベッドに倒れこんだ。

 こうなることはわかっていた。

 わたしみたいな女子が橘先輩のような男子と付き合おうとすれば反発が起きることくらい。今日は倉田先輩ひとりだったけど、これからもっと増えるかもしれない。

 学年が違うから橘先輩が守ってくれることも難しそう。いじめみたいのがどんどん増えていけば学校にだって通えなくなってしまう。

 そうなると、おじさんとおばさんにだって心配をかけてしまう。

 やっぱり無理だよね。少しでもそんな可能性を思い浮かべた自分がバカだったんだ。

 橘先輩には次会ったときに断ることにしよう。わたしみたいな女子が普通に学校生活を送るにはそれしかない。

 そう、自分に言い聞かせる。

 でも、どうやって断ったらいいんだろう。橘先輩を前にしたら、まともな言葉なんて出てこない気がする。

 その顔に見とれてしまって、何も考えられなくなるような気がする。

 わたしはベッドに仰向けに寝て、スマホを持った。まだクリアしていないゲームの続きでもやろうかなと思った。頭がぐちゃぐちゃしていたから、気分を変えたかった。

 そのとき、スマホにメールの着信を知らせる音がなった。

 さっそくそれを開いてみると、それはコンプレックスプランのお知らせ、というものだった。

 ついに来た、とわたしは思った。

 それは思春期の男女が経験すべき、精神的なテストのようなものだった。

 中学生か高校生のとき、わたしたちは何かを選ばないといけない。

 一般的にコンプレックスに当たる何かを。

 自分にとって不利になるものを選び、その状態で生活を送る。

 それを選ぶのはあくまでも自分。