橘先輩と仲良く話なんかをしていたら、いつかはこうなることは覚悟していた。

この日の放課後のこと。
わたしはまた先輩に呼び止められた。

先輩といっても、今回は橘先輩じゃなかった。

女子の先輩で、面識は一切ない人。
身長が高くてモデルみたいにスタイルが良くて、ちょっときつめの目付きも小さな顔に合っていた。

その女子の先輩は名前を三年の倉田とだけ名乗って、自分の後についてくるようにと、教室から廊下に出たばかりのわたしに言った。

どんな用事なのかは教えてはくれなかったけど、わたしは素直に従った。断るのは許さない、そんな雰囲気もあったし。

「あんたなんでしょ。慎に告白された一年っていうのって」

校舎の裏側にある人気のない空間で立ち止まって、倉田先輩は言った。慎というのは橘先輩の名前のこと。

やっぱり、こういうことなんだ。
わたしにはなんとなく想像がついていた。

きっと橘先輩が原因でこんなところに呼び出されたということが。

橘先輩はモテる。
だから片想いをしている女子も多いはず。

そういう人たちからしたら、わたしという存在は決して許せないはず。

実際、この日の教室ではわたしのことをチラチラと見るクラスメートの視線が気になっていた。

まだそんなにみんなとは親しくないから直接は尋ねてはこなかったけど。

「は、はい、そうです」

「ふーん」

倉田先輩はわたしに顔を近づけて、鼻で笑うようにした。

「やっぱりブスじゃん」

「っ!」

「え、どういうことなの。なんであんたみたいな女に慎が惚れるわけ? その辺を説明してほしいんだけど」

「わたしにいわれても……」

「あいつが告白したったいうから、どんな美人かって想像してたけど、とんだ期待外れだったわね。まあ、噂ではそうでもないって話は耳にしてたけど、それも嫉妬からくるものかなと思っていたから」