「そうですよ。他の人と間違えてたりしませんか?」

「一年生の篠崎遥さんで、間違いないよね」

「は、はい」

確かにわたしは今年この高校に入学した篠崎遥だった。
高校生活はまだ始まったばかり。そのなかで先輩と触れあったことは一切なかった。

なにかきっかけがあるのなら、まだ納得できる。ううん、それでもわたしなんかに告白をするなんてあり得ないよね。この高校は結構大きいし、それだけにかわいい生徒も多いはず。

「わたしよりも橘先輩にお似合いの人は、もっと他にたくさんいると思います」

「それって篠崎さんが決めることかな?」

確かにわたしが決めることじゃない。橘先輩の気持ちなんだから。

「それに知らないかな? 女子の言うかわいいと男子の感じるかわいいは全然違うんだよ」

そう言って橘先輩はにっこりと微笑みかけた。
ああ、かっこいいなぁとわたしは一瞬その表情に見とれてしまった。

「そんなに卑下することはないと思うよ。篠崎さんは充分にかわいい。もし自分に自信がもてないのなら、それは魅力に気づいてないだけなんだよ」

魅力? わたしに? 
そんなふうに誉められたことはなかった。正直、嬉しいという気持ちを抑えることもできなかったけど、同時にそんなはずないという冷静な自分もいた。

「ありがとうございます。でも、自分の顔がどの程度なのかはわかっているので、お世辞とかはいわなくても大丈夫です」