「い、いいです。一食くらい抜いても平気ですし」

「遠慮しなくていいんだよ。パンはもうひとつあるんだから」

「男性がパン一つじゃ足りないと思います。そ、それに、いまはダイエット中なので」

「ダイエット? そんなに痩せてるのに?」

不可解そうに聞いてくる橘先輩。

わたしは極端に太っているわけではないけれど、痩せているというほどじゃない。

体を折り曲げたときなんかはお腹の贅肉が気になったりはするし。
まあ、それでもダイエットなんかは特にはしてないんだけどね。

「まだ学生なんだから、そんな無理をすることないよ。パン一個なんか自宅と学校の往復くらいで消費されるんだから」

橘先輩はメロンパンのカロリー知らないのかな。
少し歩いた程度じゃゼロになんかなんないよね。軽くお握り2個分とかあるし。

「本当に結構ですから。購買部もしばらくすれば空くと思うので、なにか残っていたら適当に買おうと思います」

「残ってるのは大抵はまずいものじゃないかな。よくここを利用する友達から聞いたことあるんだ。購買部には定期的に外れのものが置いてあるって」

「は、外れ?」

「いろいろ商品をつくる過程で、食べられるけどそれには使えないってものがあるよね。そういう余り物の食材を再利用した形で商品にするらしいんだ」

「もったいない、からですか」

「食品ロスを減らすことが目的だってその友達は言ってたけど、実際のところはわかんないよね。作ってる側の単なる趣味かもしれないし」