「あ、まただ」

「なにがですか?」

「いや、さっきからさ、横を通りすぎるたびにジロジロ見られてるんだけど」

その言葉でわたしは冷静に周囲を認識することができた。

確かに、向こうからやってくる社会人とか中学生とか、それと歩くのが遅いわたしを追い抜いていく同じ高校の生徒とか、そういう人たちの視線を感じる。

「なにかゴミでもついてるのかな? 寝癖を直してないとか?」

橘先輩はなにも気づいていない顔で髪をいじっている。

どうしてこっちを見ていくのか、そんなの理由は一つしかない。わたしにはわかる。
わたしたちを見比べているからだ。

周りの声が聞こえてくる感じがする。
えぇー、なんであの子が。全然似合わない。
もしかして兄妹なのかな。あたしのほうが全然かわいいじゃんとか。

イケメン男子とかわいくない女子のコンビってあれだよね。
ドラマとかマンガでよくあるパターンだよね。こういうシーン、何度も見たことがある。

でも、ドラマではかわいい女優が演じるんだよね。
似合わないメガネとかをかけて無理矢理地味な感じにして。わたしの場合は本物だから。

すごく恥ずかしい。目を開けていられないくらいに。

顔から火が出そうっていう表現あるけど、本当にやけどでもしてしまいそう。周りの視線に耐えられなくて、自然と視線が下の方に落ちてしまう。