梨子ちゃんの手紙を読み終えたあと、わたしは呆然とそこに立ち尽くしていた。

 え、どういうこと。梨子ちゃんが死んだのは来栖先輩のせい?来栖先輩ってあの来栖先輩?

 レイプされた?梨子ちゃんが?

 これが梨子ちゃんがわたしに伝えたかったこと。ここに書かれたことが嘘なわけがない。
 来栖先輩にひどいことをされて、梨子ちゃんは追い詰められて死を選んだ。

 書き記した文字はところどころが歪んでいたし、紙も一部がふやけていた。梨子ちゃんがどんな気持ちでこれを書いたのか、それだけでもわかる。

 わたしは、なにも知らなかった。
 コンプレックスプランでわたしは視力を奪い、梨子ちゃんは声を失った。

 そんな二人が交わるはずもなかった。梨子ちゃんのお母さんに会ったときにだって、気づくことはできたはず。

 梨子ちゃんのお母さんはわたしのことにしばらく気づかなかった。それはしゃべることのできない娘と目の見えないわたしが友達であるはずがないという先入観があったから。

 ううん、そんなの、言い訳にもならない。
 わたしは自分のことしか考えていなかった。

 梨子ちゃんのことをちゃんと考えていれば、異変には気づけたはず。
 あの日橘先輩に告白された直後、梨子ちゃんはわざわざわたしに会いにきてくれた。来栖先輩がいる学校のほうになんか来たくなかったはずなのに。

 橘先輩がなにも言葉を発しようとしないわたしの手から手紙を取り上げた。

「来栖っ」

 手紙をわたしに押し付けるようにして、橘先輩は駆け出した。

「橘先輩、どこに行くつもりですか」

 わたしの呼び止める声に、橘先輩は立ち止まった。

「決まってるだろ。来栖のやつを問い詰めるんだよ!」

「そんなのダメです。だって、だって」

 そんなことをしたら、梨子ちゃんがされたことも明るみになってしまうかもしれない。

 梨子ちゃんはこの手紙をわたしに残した。家族には知らせなかったということは、この内容を公にはしてほしくないということ。

「それでいいのか、篠崎、おまえはそれでいいのか!」

「わたしは……」

「人は死んで終わりじゃない。残された人間の心に生き続けるんだ。おまえのなかにもまだ友達いるんだろ。声が聞こえるんだろ。納得できるのか。あいつを見逃して、なにもなかったかのようにのうのうと生きることを許すことができるのか!」

 許せない、これがわたしの本音だった。

「おまえはここで待っていればいい。おれは行くよ」

「なら、わたしも行きます。お願いします。連れていってください」

 わたしは橘先輩の目をまっすぐに見つめた。ここでわたしが逃げるわけにはいかなかった。

「……わかった。おれのあとについてくるんだ」

「はい」