だってこれは、親友の梨子ちゃんが残したものなんだよ。
 いますぐに中身を知りたいって考えるのが普通なんじゃないの?

 コンプレックスプランを中断するのが嫌だから?
 そんなことをすれば、将来にマイナスの影響が出る。おじさんとおばさんのためにも、わたしは少しでもいい会社に入らないといけない。

 そんなことで?
 わたしは梨子ちゃんを見捨てるの?
 この手紙に大事なことが書いてあったら?

 取り返しのつかないようなことを、あとで知ったら?
 友達としてそれでいいの?いますぐに知りたいとは思わないの?

 梨子ちゃんの気持ちを少しでも無視しても平気だというの?
 そんなはずない。

 梨子ちゃんがなにを伝えたかったのか、わたしは知らないといけない。

 溢れ始めた涙を、わたしは拭うことすらしなかった。橘先輩を正面に見て、わたしはこういった。

「わたしは、本当は目が見えるんです」

「え?」

「目が見えないのは、あくまでもコンプレックスプランの影響なんです」

 次の瞬間、ぼやけていた視界に光が差し込んできた。
 眩しさに一度目を閉じ、涙を拭いたあと、再び目を開けた。

「コンプレックスプラン……そうなんだ」

「すいません、騙してしまって」

「いや、みんなやってることだから。それよりも手紙を落としてるよ」

 地面に視線を向けた。わたしの手でくしゃくしゃになった手紙が落ちている。目を開けた瞬間に落としてしまったようだった。

 わたしはそれを拾った。
 なにも書かれていない封筒。封もしっかりと閉じられている。

 わたしは橘先輩を見た。

 橘先輩はうなずいて見せた。

 わたしは手紙の封を破った。