つかまれた方の腕を激しく振った。
 橘先輩は決して力を緩めようとはしなかった。

「もう、いい加減にしてくださいよっ。警察を呼びますよ!」

「その手紙、ぼくが読むよ」

「……え」

「篠崎さん、きみひとりではどの道、手紙の内容を理解することはできない。誰かの手助けが必要だ。他に適当な人がいないのなら、ぼくにその役目を任せてほしい」

「……」

「きみは目が見えない。それがより不安を増幅させているのだと思う。自分一人の覚悟だけではどうしようもないよね。誰かに手紙を読んでもらうということは、自分がその内容を知る二番手ということにもなるし、なによりも、本当にそこに書かれていることをちゃんと読んでくれているかどうかもわからない。だから、現実逃避をしてしまっているんだ」

「……」

「ぼくのことを信頼してほしい。その手紙に書かれていることがもし衝撃的な内容であってもぼくはそのまま伝えるよ。そして、二人で苦しみを分かち合おう。一人では耐えきれないことでも、ぼくと一緒なら乗り越えられるはずだよ」

 どうして?
 どうして橘先輩はそんなことを言うの?

 わたしのこと嫌いなんでしょ。死んでほしいとか思ってるんでしょ。
 それなのにそんな優しいこと言うなんておかしいよ。

 橘先輩が手紙に手を近づけたのがわかった。

 わたしは手紙を離さなかった。

「篠崎さん……」

 そうじゃない。
 橘先輩はなにも知らない。
 だってわたしはこれを読むことができる。
 コンプレックスプランが終われば、自分の意思で確認をすることができる。

 コンプレックスプランが終われば?
 どうしてそこまで待たないといけないの?

 待てるの?
 いま、読めばいいのに。ううん、読まないといけないんじゃないの?