「……ここに来る途中で、信号無視で突っ込んできた車に撥ねられたらしい。今、この近くの病院にいるって」
光輝くんは、電話で翼くんのお母さんから聞いたことを教えてくれた。

「だからすずちゃん、僕たちも今から病院に行こう」

にわかには、信じることができなかった。それでも私たちは、無我夢中で走った。途中、浴衣のせいで何度も転びそうになってしまったけれど、その度に光輝くんが手を取ってくれて、何とか病院まで辿り着くことができた。

病室へ行くと、彼は静かにベッドに横たわっていた。腕や口元から何本も透明なチューブが伸びていて、頭、足は痛々しく包帯で巻かれている。
「あの、」
二人でゆっくりと病室へと足を踏み入れると、中にいた40代くらいの女性が私たちに気付いてこちらを振り返った。目元が赤く腫れていて、つい先ほどまで泣いていたのだろうということは容易に想像がつく。
「光輝くんと、すずちゃん、よね。わざわざ来てもらってごめんなさい。あと花火も……」
翼くんのお母さんらしき女性が言う。
「……いいんです。それより翼は……?」
光輝くんが恐る恐る尋ねると、お母さんは困ったように目を伏せて、それから言った。

「病院に運ばれてすぐに手術をして、なんとか命は助かったの。今は、麻酔で眠っているだけ。でも、足が……」
「足……?」
彼の足に何重にも巻かれた包帯は、怪我の酷さを私たちに嫌というほど実感させた。
「翼の足が、どうかしたんですか……?」
光輝くんが聞く。翼くんのお母さんは、ゆっくりと首を横に振り、そしてあまりに理不尽で残酷な現実を、ぽつりぽつりと話した。
翼くんのお母さんの話を簡単にまとめると、事故によって翼くんは脊椎を損傷した恐れがある、らしい。その場合、もう自力で歩くことは困難だという。
私たち二人は言葉を失った。
「そんな……」
頭の中で感情はぐるぐると渦巻いているのに、それを表現する術が見つからなかった。翼くんも、光輝くんさえも、すぐそばにいるはずなのに、私一人だけが何もない空間に一人取り残されてしまったような孤独感に包まれる。


「……翼?」
どのくらい時間が経ったのかはわからない。光輝くんの声で、私は現実へと引き戻された。
翼くんの方を見やると、彼はしっかりと目を開けている。
「翼くん……!」
光輝くん、翼くんのお母さん、そして私の三人が一斉に翼くんのもとへと駆け寄った。翼くんのお母さんが素早くナースコールを押し、すぐに看護師さんたちが入ってきた。