初恋が実らないというのは、本当である。

夏の日の朝。学校へ行くと、昇降口で幼馴染の姿を見つけた。
「すーずちゃん! おはよ!」
後ろから元気よく声をかけて、彼女の隣に並ぶ。
昔から、ずっと守ってきた場所。でも今、この立ち位置が危うくなっているということは僕だって気づいてる。たぶん、彼女は自分の気持ちを隠してるつもりなのかもしれないけれど、僕からしてみれば、彼女はわかりやすいから、だいたいのことは顔を見ればすぐにわかる。

だから僕のこの長い片想いが、報われないのは知っていた。

「あ、そういえばすずちゃん、今年の花火大会どうする?」
花火大会は、小さい頃から毎年必ず二人で行く。今年も二人で行こうよって、そう言ってほしくてそんなことを聞いた。それが自分の首を絞めることになるなんて、頭で考えなくてもわかっていたのに。
「――確かに、それも楽しそう…!」
やっぱり彼女の目には翼一人しか映っていなかった。

「え!? 二人!? いやいや、それはさすがに…!」
「あ、でも翼くん、お祭りとか行くのかな…」

僕の葛藤なんか露知らず。彼女は健気に彼に想いを馳せている。
「――僕が一番、よくわかってるはずなのにな……」
「? 光輝くん……?」
「ううん、なんでもないよ。あ、噂をすれば、――」
僕のこの気持ちは、すずちゃんはまだ知らなくていい。だってきっと、彼女を困らせてしまうだけだから。