鍵を開けて家に帰った瞬間、一気に眠気がやってきた。

元気なはずなんだけど眠くて眠くて、本当に一度倒れたらそこで熟睡する自信があった。ふらつくぐらい眠い。なんだこれ、遠藤くんの呪いか?母親がパートでよかった。捕まってマシンガントークなんてされたら死ぬわ。

頑張って部屋に入ろうとする前に、ふらつきながら兄の部屋をノックして声を絞り出す。

「兄ちゃん、今日はありがとう。このお守り超強力って遠藤くん本人が言ってくれて自慢だった。悪霊に効き目あるんだって、でも遠藤くんには効かなかった」
 素直に言ってアハハと僕は笑った。
 死ぬ間際の遠藤くんじゃないけど、なんかハイになってる自分を危なく思う。

「今すんごく眠くてさ、遠藤くんの余波みたいなもんかな。今日は寝ちゃうけど、今日の話を聞いてほしいんだ。めっちゃ不思議で激動の二日間だった。直接顔見て話したいから……今度……絶対聞いてよね。じゃおやすみ」
 それだけ言って部屋に入り
 ベッドにダイブすると記憶がもう無くて……目を覚ましたら……次の日の朝の5時だった。

 え?
 何時間寝てた?
 15時間ぐらい?

 寝すぎて頭が痛い。

 学校から帰ってきたままの姿で寝ていた。カーテンは閉じていてクーラーは停止され窓が少し開いていた。枕元におにぎりとペットボトルのお茶が置いてあった。

ベッドから起き上がって頭を抱えてお茶を飲む。

 腹へった。
 おにぎり嬉しい。

 スマホのLINEを開くと、兄からLINEが届いていた。
 何年ぶりだろう兄から来たのは。目が一気に覚める。
 それを開くと
 たった一行【わかった】って書いてあった。昨日の2時ころ届いている。

【わかった】って何だっけと、回らない頭で考えてから思い出す。
 顔を見て直接話を聞いてくれる約束だ。
 早朝から嬉しくて叫びたくなったけど我慢して、昨日からの大量ラインを既読にして最新のクラスグループLINEを見ると今くらいの時間の書き込みが多かった。

みんな同じくらい寝ていたらしい。

 遠藤くんの最後の呪い。
 そんな題名を付けて、書き込んだ人たちは楽しんでいた。

 僕も寝ぼけた猫がおはようとつぶやいているスタンプを押して、カーテンを開き夏の朝の空気を満喫する。

 最後の約束が僕には待っていた。