「晃弘は先に家に帰ったようだ。みんなで帰ろう」
 遠藤くんのお父さんは自分の家族に優しく教えてあげると、お姉さんは「やっぱりズルい」と言って泣いてるお母さんの腕を取った。

 遠藤くんのお母さんは大岸くんに「ありがとう」ってお礼を言い、みんなに一礼して、ちょっと微笑んだように遠藤くんのお父さんとお姉さんに支えられて教室を出て行った。


 静まり返る教室で、それぞれに遠藤くんの言葉をかみしめている。


「俺の話は?先生の事は何か言ってたか?」
存在を忘れられていた担任が僕たちに聞くけれど、自己中すぎてムカついてしまう。『嫌ってたみたいですよ』って言ってやろうかとも考えてしまう。

 すると北沢が担任に向かって声をかけた。

「保護者会の話をしてました。もう遠藤くんは成仏して天国に行くので、ここには出てきません。クラスのみんなにも説明したので、みんな納得済みです。何も問題はありません。カウンセリングもいりません。保護者会は中止にして下さい。しないとまた出てきて混乱させるって言ってました」

 北沢は嘘を見事に交えながら担任に言うと、委員長の言葉は信頼しているのかうなずいて「会議にかけて中止にする」って言ってくれた。

「問題は解決したけど、諸田先生は自分の手柄にしないようにって言ってました。変に職員室で自分が丸く収めました感出したら、本格的に取りついて呪うって言ってました」
 矢口がスマホを確認しながらそう言うと、周りのみんなも合わせて「それ言ってた」「絶対やるよね」と口々に合わせる。

「わかった。問題解決でいいな?もう、この騒ぎは終わるんだな」
 担任は泣きそうな顔でそう言って、廊下を走って行ってしまった。

「そんなこと言ってたっけ?」
 坂井が矢口に向かって聞くと、矢口は「あれ?言ってなかった?」と返事をするから、僕たちは笑った。

 久しぶりに
 クラスみんなで笑った。

 遠藤くんも見てたら

 きっと笑っていただろう。

 ゴミ飛ばしじゃなくて
 こんな感じでクラスの一体感を持てばよかったんだよ。

 八つ当たり的に出てきて
 僕たちをパニックにおとしいれたのは迷惑だったけど


 ごめん。

 それから
 出てきて

 話してくれてありがとう。