「消えちゃう前に僕が言えるのは、ちょっとした弾みで調子にのって命を落とすことがあるから、油断しないでねって言いたかったのと、もう少しみんなと仲良くなりたかったなって話とあとは、家族に伝えたい話があって……」
 遠藤くんはお母さんとお姉さんに視線を合わせていた。

「お母さんごめんね。迷惑かけてごめんね。お姉ちゃんいつも励ましてくれてありがとう。変な死に方して本当にごめんなさい。身体に気を付けて長生きしてね。誰も悪くないから」
 遠藤くんは笑顔を見せてくれたけど、僕たちはなぜか本当にお別れなんだと悲しい気持ちになっていた。昨日は恐怖に怯えていたのに、目まぐるしい二日間だった。

「お母さんの誕生日プレゼントを僕のベッドの下に隠してにあるから、帰ったら受け取って下さい。あとお姉ちゃんには僕の部屋にある物で、欲しいのがあったら全部あげるから」
 遠藤くんのお母さんとお姉さんはうんうんとうなずいてまた涙を流す。

「あと……2年前にお姉ちゃんが飼っていたインコを逃がしたのは僕です」
 突然のカミングアウトに通訳係の大岸くんの動きが固まって口ごもる。

「お父さんのせいにしたけど、僕がやりました。それからたまーに無くなっていたプリンもアイスも僕です。酔ったお父さんではありません。死んだ日も高級アイス食べました。それは後から買いに行く予定でした。お気に入りの雑誌を折ったのも僕です、でもそれはお姉ちゃんがソファの上にバサッと置きっぱに……」
「いや遠藤くん!俺、それ言いずらい……」
「でも言って」
 きっぱり言うので、感動で涙目のお姉さんに大岸くんが伝えると、お姉さんの涙は止まり表情が消えてお地蔵さん顔になっていた。

 遠藤くんのお姉さんは愛情いっぱいの人だけど
 まじ怖い。