遠藤くんのお母さんは先生を無視して遠藤くんに語りかける。

「ごめんね。晃弘の辛い気持ちに気づいてあげれなくてごめんね。もっと話しを聞いてあげればよかった。もっともっと話したかった。ごめんね。こんなお母さんでごめんね」

 聞いているこっちの心が痛む。

 あーすればよかった
 こーすればよかった

 あんなことをしなきゃよかった。
 もう全て遅いんだ。

「いじめられたの?晃弘はいじめられて死んだの?お母さん認めたくないけど自殺だったの?携帯には細かく書いてなかったから、お母さん本当のことを知りたいの。晃弘の口から聞きたい。晃弘の姿を見たい。晃弘と話がしたいの」

 それはお母さんの心の叫びだった。

 女子たちの「ごめんなさい」という声と、すすり泣く声が教室に広がった。

「晃弘。お母さんに姿を見せて、返事をして」
 必死で訴えるお母さんの姿を見ても、遠藤くんは悲しい顔でうつむくばかりだ。

「ごめんね……ごめんね晃弘。お母さんが悪いの。ごめんね」
 遠藤のお母さんの姿を見て、北沢は唇を噛みしめて涙を流していた。

 教室中が悲しみと苦しみの二重奏で、このままみんなで地獄に落とされても、自分たちの行動を振り返ると、別にいいんじゃないかと思ってしまった。

 もう
 みんな
 ショックで頭が回らないのかもしれない。

 人がひとり死ぬってことは

 大変なことなんだ。