「兄ちゃん……あのさ……」
緊張をごまかすように、僕はノックをしてからすぐ言葉を繋ぐ。
「今日、すげー変なことがあってさ。誰も信じてくれないけど、こないだ亡くなった遠藤くんが教室にやってきたんだ。顔色は悪かったけど普通な感じでさ、遺書はなかったけどいじめられて死んだみたいで、幽霊になって出てくるくらい辛かったんだって。僕たちクラスのみんなに復讐するんだって。恨んで恨んで地獄に落とすんだってさ」
兄の部屋からは何の反応もなかった。
「遠藤くんの姿が見えるのは僕たちクラスだけで、担任も他のクラスの奴らも見えないんだ。画像にも映らないから誰も信じてくれない。めっちゃ吐きそうになるくらいの金属音を武器にしてる。みんな僕たちが遠藤くんの死に心を痛めて集団で病んでるって思われている」
そんないい子達ばかりなら、遠藤くんは死ななかったのに。
「復讐されて僕が死んでも葬式とか出なくていいから。兄貴は長生きしろよ」
何を言ってるんだろう僕は。
「兄貴は生きろよ。引きこもっていいから生きろよ。遠藤くんみたいになるなよ」
どうしたものか
胸が苦しくなって
喉がヒリヒリして目が潤んできた。
「遠藤くんも死なずに引きこもればよかったんだよ」
何を泣いているんだろう僕は。
「引きこもってくれてありがとう。生きててくれてありがとう」
それだけ言って、僕は頭で兄の部屋にドンと頭突きをして自分の部屋に戻った。
何をやっているんだろう僕は。
誰よりも乙女になってる。恥ずっ!
兄ちゃん寝てたらいいのにな。
深い反省をしてから
僕は眠りについた。