ふたりで歩いていると、近くの私立高校の制服を着た女子たちが笑いながら僕たちとすれ違う。僕と北沢は何となくコソコソと下を向いて歩いていると

「うっちー」って、浮かれた声をかけられた。

「うわ偶然。元気だった、えっ?彼女?」
「うっちーの彼女さんだー可愛い!!」
 ブランド物の制服を多少気崩しながら、うっすらメイクの中学時代の同級生に声をかけられた。

「同じ吹奏楽部です」
 壁を作ったようによそよそしく北沢がそう言うと「そうなんだー」って渋々と納得してくれた。

「吹奏楽まだやってるの?アルトサックス続けてるの?」
 続けている楽器名が違うと気づき、北沢は「えっ?」って言葉にした。

「あ、今はトロンボーン吹いてる」って、なぜか慌てて担当の楽器を言う。
「えーっ。心機一転?上手かったのにー」
「うちの高校入ればよかったのにー吹奏楽レベル高いよ」

「ごめん急ぐからまた」と、僕は彼女たちをシャットダウンして手を降り先に進んだ。北沢は追いかけるように僕の後ろから付いて来る。

 僕の町には僕が行ってるそこそこの公立高校と、設備のいい私立高校がある。
 私立高校は部活に勉強に、先生も校舎も良くて、今沢みたいなガラの悪い奴もいない……って聞いたけど、それは入ってみないとわからない。

 制服もブランド物だし、すれ違うと引け目を感じてしまう。

「アルトサックスだったの?」息が上がってる北沢に気づき、僕は歩くテンポを下げてゆっくり歩き出す。

「うん」
「先輩たちが使ってるから、余ってないもんね。来年チェンジしたら?」
 僕を見上げて言う北沢はリス顔に磨きがかかり可愛かった。

「いや、トロンボーンもやりたかったし」
「……そっか。内田君トロンボーンも上手だよ」
「きーつかってる?」
「うん」
「おいっ!」
 軽く小突くと「ひえーっ」と明るく返事が返った。