部活を休んだので、雨が降る前に帰れそうだ。

 校門前で帰りの方向の関係で、僕と北沢、坂井と大岸くんと矢口の二組は校門で別れた。大岸くんが北沢を気にかけて一緒に帰りたそうだったけど、北沢は「また明日」ときっぱり言って手を降った。

「うっちー」
 半泣きな坂井を「うっちー離れしろよ!」「まったく乙女なんだから」と、大岸くんと矢口が笑って引っ張っている。
「矢口んとこ泊めて」
「今日は編集作業するからダメ。大岸んとこ行けよ」
「いいよ。どうせ寝れないからずーっと勉強してるけど、一緒にするならいいぞ」と、からかわれてまた半泣きだ。
 北沢はやっと笑ってまた手を降る。
 大岸くんが僕じゃなくて、ずっと北沢を見ているまなざしが恋する乙女になっていた。

「雨降る前に帰ろう」
 北沢に言われて一緒に並んで歩く。
 夕立前の湿った空気が僕たちにまとわりつき、妙に息苦しくなってしまう。

「内田君とツーショットで帰るの初めてだね」
「う……ん。そうかな」
「そうだよ。他の女子に怒られちゃう」
「誰も怒んねーよ」
「草食系の内田君は人気あるよ」
「ねーよ。それを言うなら俺だって怒られる」
一番に大岸くんに怒られそうだ。
「ねーよ」
 僕の口真似をして北沢が笑って僕の背中を強く叩いた。

 大岸くんに気を使って、ツーショットで帰らせてもよかったのに、僕の気持ちがそれを拒否した。僕は北沢と一緒に並んで歩いて帰りたかった。

 こんな時なのに。

 互いのポケットからLINEの着信音が止まない。クラスのグループLINEがにぎわっているんだろう。

「どうなっちゃうんだろうね」

「うん」

 過去問にもない
 対処できない問題だろう。