すごく疲れた。
一般人の中の一般人の私が婚約者お披露目会見の張本人だなんて、契約でも無ければあり得ない事だ。

テレビをつけると、記者会見の模様が生中継されている。
彼はすごくかっこいい、何で?振られるの?何で私なんだろう、いくら考えても理解出来ない。

でも私はすでに彼に心惹かれて、彼なしでは生きてはいけない状況になっていた。

彼を待っていると、部屋のインターフォンが鳴った。
私は彼だと思い、相手を確認せずに、ドアを開けてしまった。
取材の記者が押し寄せ、あっと言う間に部屋に入ってきた。

「先程冴木社長がおっしゃっていた事は、間違いないですか?」

彼はなんて言ったんだろう、わからないよ。

「うまく玉の輿に乗った感じですが、秘訣はなんでしょうか」

「冴木社長は数々の女性遍歴をお持ちですが、心配はないでしょうか?」

私はどうしたら良いか途方に暮れていた。

「現在二十代のモデルと熱愛中ですが、愛人は公認ですか?」

えっ?二十代のモデルと熱愛中?
やっぱり彼女いるんだ。
そうか、私とのキスは契約だから、そうだよね、誰が好き好んで、お腹に他の男の子供がいる女性とキスしないよね。

そこへ秘書の山元さんが来てくれた。

「出て行ってください、取材でしたら、社長が受けるとの事ですから、お引き取りください」

山元さんは記者を追い払ってくれた。

「雫様、大丈夫ですか?本当に申し訳ありません


「大丈夫です、お気になさらないでください」

そこへ彼が状況を聞きつけ駆けつけてくれた。

「雫、大丈夫か」