「一緒に暮らそう? お母さんが再婚した人もね、晴がうちに来てくれたらいいなって言ってくれてるの。そうすればちゃんと大学にも通わせてあげられる」

隣県A大で大学教授をしていらっしゃるという遥さんの旦那様は、とっても優しくて家族思いの人。会ったことはなくても、ずーっと晴のことを気にかけてくれていたらしい。デキがいいのに家庭環境のために高卒を余儀なくされる晴に、すごく同情的なのだという。

「ね? うちにおいでよ、晴」

遥さんの説得が一区切りした瞬間、この場に同席する全員が固唾を飲んで晴の様子を見守った。
そんな中、じっと遥さんをみつめていた晴は。

「行かない」

スパっとそう言い切って、きっぱりと首を横にふったのだ。
ガーンてショックを受ける遥さんの目にまた涙がにじむ。
「やっぱり私のこと恨んでるよね・・私と来るのは嫌?」
「そーゆうんじゃなくて。オレはただ、一花とここにいたいだけ」
隣に座る私の顔をのぞいて、晴が幸せそうに頬を染める。
「だって高校卒業したらオレら結婚するし。な?」
「う・・うん・・」

「ーーーケッコン!??」

遥さんが目をむいた。
ちゃぶ台に両手をついて、つんのめりそうなるのを必死でこらえる。

「あ・・あのね晴、もちろん、そーゆう気持ちもわかるんだよ? だけどねーーー!?」