しーんと静かになった居間に取り残された私たち。
三花さんが置いていった温かいお鍋から、うっすらと白い湯気が立ちのぼる。
それに吸い寄せられるようにお鍋のもとへと集まった私と佐山は、まかないのお鍋の蓋をそおっと取ってみた。

「「うわー、ビーフシチューだ・・!」」

一緒に鍋をのぞいた佐山も目を輝かせてる。
なんとなくわかる。たぶんこいつも私と同じ。貧乏だ。飢えてる。

「いい? 佐山くん、このシチューの配分はね?」

まず三花さんの明日のブランチのための1杯をとりわける。
その残りを佐山と私とでキッチリはんぶんこ。
ヤツの取り分をよそったお椀を差し出すと、その中身を覗いて佐山はガッカリと肩を落とした。
「こんだけ!? オレ、絶対足りねえよ・・」
「んじゃ何か買ってきて作ったら? 自分で」
「おまえはどーすんだよ。おまえだってこれじゃ足りねーだろ?」
「私はいらない」
「ウソだろ!? あんた少食??」

三花さんちだってそんなに余裕があるわけじゃない。
三花さんには遠慮なく食べてって言われてるけど、私はなるべく食費を切り詰めていた。

「佐山くん、お金は?」
「あんま持ってない」
「ちょっとはあるんでしょ。ならそれでなんとかすれば?」

ビーフシチューを食べた後、佐山はどこかへ食料の調達へと出かけてゆき、私は2階の自分の部屋へとひきあげた。2階の二部屋のうちの一部屋を私室として使わせてもらっているのだ。

そして深夜。
家族じゃないメンツばかりが集まって、佐山家の『家族会議』が開かれることとなったのである。