ふらふらと歩いて戻った校門では、眉間に深ーいシワを刻んだ晴がイライラと私を待ち構えていた。

「なにあいつ。何の用?」
じいっと目をのぞきこまれて、私は言葉につまってしまった。
「ええっと・・なんていうかーーーなんでもない」
「んなワケあるか!! おまえ、顔真っ青だぞ!! 何言われたんだよ、何かマズイことでもあった??」
「ホントに大丈夫。元気でやってるかって。ただそれだけ」
こんな話、絶対に晴の耳には入れたくない。大丈夫って、そればっか繰り返してごまかした。

だってあんな人、私の人生には関係ない。

ポケットの中でぐしゃりと名刺を握りつぶすと、今頃になってめらめらと怒りが湧いてきた。
ーーーふざけんな。誰が愛人なんかやるもんか。
貧乏でも不安定でもいい。卒業までなんとか凌いで、このままずっと晴のそばにいる。

ちょっとびっくりしただけだ。
全っ然、大丈夫。
私が落ち着きを取り戻すと、それにつられて晴も渋々クールダウン。

「なんもないならいいけど、オレの知らねーとこであいつに会わないで」
「うん。たぶんもう二度と会わない。それより早く帰って釣りに行こ」