「一花ちゃん、久しぶり」
「あ。堤さん」

校門を出たとこで私に声をかけてきたこのちょっとステキな渋いおじさまは、ママの最後の恋人だったお医者さん。
堤さんは隣に立つ晴にも軽い会釈をしてから、私に向き直って爽やかな大人の笑顔をふりまいた。
「元気にしてた? 少し話がしたくて来てみたんだけど、時間あるかな?」
って私と晴とを見比べる。

「誰?」って小声で聞いてくる晴に「ママの恋人だった人」ってささやいてから、私は堤さんに「大丈夫ですよ、ちょっとなら」って答えた。
ママのことで何か大事な話があるんだろうって思ったから。

「じゃあ少しふたりだけで」
「はい」

晴には校門で待っててもらって、私たちは向かいのコンビニの駐車場へ移動した。堤さんは広い駐車場のすみっこに大きくて立派な黒い車をとめていて、私たちはそのすぐそばで立ち話をはじめた。