「ねえ! どーなの!? ホントの話なの!?」
三花さんに凄まれて佐山くんが渋々口を割った。
「うーん・・ホントって言えなくもねえけど・・「嘘、やだ、なんで!?」
まだ何か言おうとする佐山くんの言葉を遮って三花さんが呆れ果てた声を上げ、
「なんでそんなとこばっかお兄ちゃんに似ちゃうの!? あの可愛かった晴くんが・・」
ってガックリと肩を落とす。

目の前の大騒ぎに私はただただポカーンて固まっていた。
佐山くんはといえばじっと口をつぐんでダンマリを決め込み、わーわーとしゃべり続ける三花さんをかわして、なんとかこの場を凌ごうとしてんのがミエミエ。

私の脳内で佐山から『くん』がポロリと外れた。父親の女と浮気するヤツなんか呼び捨てで十分だ。

三花さんがチラッと私を見てからキッパリと佐山に言い放つ。
「今ね、一花ちゃんをうちで預かってるの。だからあんたみたいにだらしない子は絶対にここへは置いとけない。お兄ちゃんに連絡するから晴くんは家に帰りなさい」
そう言われた途端、ザッと青ざめた佐山がブンブンと首を横にふって三花さんに泣きついた。
「帰れるワケねーよ! オヤジ、あのオンナと切れてねーのに」
「あのオンナって・・まさかアンタが寝取ったってヒトのこと!?」
「そう。まだオレんちにいる」

「~~~!!!」

心底困った顔した三花さんがちゃぶ台にドカンとお鍋を置いた。

「今は時間がないから後で話そ。仕方ないから今夜一晩だけ泊めたげる。だけど明日は絶対に出て行って。それから一花ちゃんにヘンなことしないこと! いい?」
「ありがと、おばちゃん。大丈夫。オレ、大人しくしてるから」
って佐山が調子よくウンウン頷く。
「約束よ、晴くん」
厳しい顔つきで佐山にガンを飛ばしてから、三花さんは慌ただしく仕事に戻って行った。