「おばちゃんがオレにお茶碗くれただろ? オレ、ここ出る時は絶対にあれもらってく。んで、一花のお茶碗はオレが買いたい」
「私、お茶碗くらい自分で買えるけど?」
「いーや、オレが買いたい。オレに買わせて」

ああ、まただ。なんでかわかんないけど、晴ってこう。
ちょいちょい『くれたがりの晴』が降臨するのだ。
ちなみにこれは『奢りたがり』の別バージョンである。

「なんで? 私がビンボーだから?」
「そっ・・れもあるかもしんないけどさあーーーってよりはたぶん、オレの自己満・・」
晴が恥ずかしそーうに私を胸に抱え込む。
自己満ってのがどーゆう意味なのかは聞いても教えてもらえなかったけれど、ゴハン奢ってくれてたのは単純に楽しかったからだという。
「だって一花、スゲー美味そうにメシ食うんだもん。可愛いからいっぱい色々食わせてみたかった」
ラーメン食いに行った時はもう好きだったと言われてドキドキと胸が鳴った。
私も晴のこと意識してたよって言ったら、もっと顔に出せと言って怒られてしまったが。

ぴったりとくっついた胸から互いの鼓動が伝わる。
晴がいてくれてよかった。幸せだなあって思った。

「んじゃあ、せっかくだからお茶碗は晴に買ってもらおーかな」
「うん。オレが買ってやる」

どんなお茶碗買ってくれんだろ。
ま、なんだっていい。晴が選んで買ってくれるヤツならなんでも。