一花と晴

もうダメだ。
みつかる。誰か助けて。
「ママ!!」
って飛び起きて目を開けたら、真っ暗な部屋の中に誰かいる。

「うギャ・・・・・・「バカバカ、叫ぶな!!」

私の顔ごとぎゅうぎゅう抱きしめて口を塞いだのは晴だった。

「びっくりした。なんでここにいるの」
「だっておまえ、すんげえ寝返りうちまくってたから」
「そんなのが下まで聞こえんの!?」
「だってオレの寝てる真上なんだもん。わかるわ」
膝立ちだった晴が、お布団の上に座りなおして背中をさすってくれる。悪い夢みてたんだろ、って。
「うん。怖かった・・何かに追いかけられててさ。あの足音ってもしかして晴だった?」
「オレじゃねーよ。オレが下にいた時からとっくにうなされてたぞ」

ゴロンと横になった晴が私を抱えてお布団にもぐりこんだ。
「しばらく一緒にいてやるよ。怖いのがおさまるまで」
上掛けをきれいに整えて、背中をぽんぽん叩いてくれる晴はまるで子供を寝かしつけるお母さんのよう。
だが、しかし。晴はもちろんお母さんなどではない。
お年頃の男の子で、その上私の彼氏くんなのである。
「すんごい嬉しいんだけどさあ・・ダメじゃないかな、こーゆうの・・」
階下の三花さんが気になった。だってこれ三花さんとした『清いオツキアイ』の約束に抵触してる気がする。

だけど晴の見解によれば、ギリセーフ。
「これくらいいーんだよ。だってオレ、一花の婚約者だもんね」
「・・ん? コンヤクシャ??」
そう言われて思い出した。さっき晴が勢いで口走った結婚のハナシを。
「そうだ、忘れてた! なんでいきなりあんなこと言ったの?」
晴がちょっとだけ言葉を切って考える。

「オレ、家族がほしいんだ。だから一花と家族になりたい」

いや?と聞かれて首を横にふる。
「んーん。私も家族ほしい。さみしいもん・・」
へへへと嬉しそうな晴が「んじゃ、ケッコンしよ。高校卒業したら」と、今頃になってプロポーズ。順番なんてあったもんじゃないけど、そこらへんは「ま、いっか」と流して「うん」と答えた。

「絶対だぞ。約束な??」
「わかった。約束。ケッコンしよ」

うんうんと頷きあって、お布団の中で指切りをした。