「黙っててゴメン。一花ちゃんのお父さんともつきあってたことあるの。千花の彼氏って知らなくて・・」

やっぱり・・!!
このダブルブッキングがママと三花さんの決裂の原因だった。

「じゃ、じゃあ私、三花さんの恋のライバルの娘ってことになるんじゃあーーー」
青ざめる私に三花さんが笑いながら首を横にふる。
「そんなに重たく考えないで。千花とは喧嘩別れしちゃったけどさ、私らホントに仲良かったの。楽しい思い出だっていっぱいある」

小中学時代をともにすごしたふたり。
『千花』『三花』って名前が似てたことがきっかけで仲良くなったママと三花さんは、特別に気の合う大親友だったという。しかし残念なことに男のシュミもそっくりだった。

「私のほうが後だったんだ。私のせいで千花は一花ちゃんのお父さんとダメんなっちゃって・・」

父と三花さんの関係が発覚してすぐ、ママがふたりを呼び出して大喧嘩になったのだという。その場で父と三花さんと絶縁したママは、その数週間後に私を妊娠していることに気がついた。
すでに両親を亡くしてひとりぼっちだったママ。だけどその頃ママのそばには『ママを支えてくれる人』がいて、その人のおかげでママは私を出産することができたんだ・・って聞いたことがある。

一方、三花さんもその大喧嘩の後すぐに父と別れたらしい。
けれど、ふたりは友達として細く長くつながっており、父は今でも三花さんの居酒屋にたまーに顔を出しにくるのだとか。

「それで一花ちゃんのこと聞いてね? うちで預かろうかって・・」