『だーって三花ちゃん、2年も待てる!? グズグズしてたらババアになるよ? ねえ、40前でも子供って産めるの??』
男が畳みかける。『オレと結婚したいなら今よ?』とか言って。

ババアだの40前だのと未婚の女子に年齢のことを持ち出す無神経さに加え、あのエラそうな上から目線。『結婚してあげる』は、絶対にプロポーズの言葉ではない。ほんのちょこっと覗き見しただけで、私はこの男をハッキリと嫌いになった。
んだけど、そんなふうにイラっとしたのも束の間。
男の続けた言葉に、私の心はしゅーーんとしぼんでゆく。

『だいたい、血縁もねーのになんで三花ちゃんがそいつの面倒みてやんなきゃなんないの? 父親がいんでしょ? ならそいつが引き取るのがスジってもんでしょうよ。んなメーワクなガキはとっとと親に返しちゃって、オレと結婚しよ? ね?』

真っ青になって立ち尽くす私の手を引いて、晴がそおっと歩き出す。
海に引き返した私たちは松の木陰に静かに腰を下ろした。