汚れてるし生臭いから、玄関じゃなくて裏に回った。

ところが隣を歩いてた晴がいきなりピタッと足を止めたのだ。
「まてまて、ストップ!!」
声をひそめてさっと姿勢を低くする。でないとでっかい晴は生垣から頭がとびだしちゃうから。
「どしたの、急に」
「しーーー!! 男がいる」
晴が私の腕をひいて生垣に身をよせた。
生垣の隙間からこっそりと庭の様子を窺うと、確かに男の人がいる。
んでその人と三花さんがーーー

「「!!!」」

ドキドキと鳴る胸をおさえて晴を見上げると、晴も頬を赤く染めて私を見下ろしてくる。
「し、親しい人みたいだね・・?」
「その最上級のヤツな」
お邪魔はできない。もう少し海でヒマつぶしてこようか、って向きを変えようとした時だった。

『ーーーなんでダメなんだよ、結婚してよ』
三花さんの彼氏が放った言葉に私たちの足が止まった。
『無理。一花ちゃんをキチンと卒業させるまで、そーゆうことは考えられない』
再び生垣に顔をつっこんだ私たちの目に映ったのは、こっちに背中を向けて立っている三花さんと、彼女の背中に甘えるようにくっついてる男の姿。三花さんに『ユウタ』と呼ばれるその男は、緩いパーマのかかったチャラくてだらしなさそうな大人の男だった。