イッパツ目は晴。
黄色いヒラヒラのついた花火をそおっと蝋燭に近づけると、しゅーっていう派手な音とともに、カラフルな炎が噴き出した。

「「「おおっ!! キターーー!!」」」

一気に盛り上がる。
三花さんちの花火大会の開幕である。

花火は、もんんんのすごく、楽しかった。
ゼータクして3本も4本も一気に火をつけちゃう晴の無茶で息ができないほど煙にまかれたり、足元のヤブに潜む蚊にしつこくたかられたりもしたけれど。
そーゆうのもひっくるめてゼンブが楽しかった。

三花さんは、言い出しっぺのくせに早々に花火の輪から離脱して、ビール片手に縁側から私たちを眺めて目を細めている。
「三花さん、もーやらないの!? まだいっぱいあるよ?」
「ビールが格別にウマイのよ。ここで飲んでるからふたりでやって」
いつのまにかイカまで用意して完全に腰据えちゃってるのだ。
だけど私はそれを許さなかった。
「やだよ、三花さんも一緒にやろう?」
私は子供のように三花さんの手をひいて、彼女をムリヤリ庭におろしてしまった。
「あららら・・チョットまって、一花ちゃん。ビールがこぼれちゃう」

だって3人でやりたかった。
晴と、三花さんと、3人で。

私がここにいられるのは2年だけ。
更に言えば、その2年だって確実じゃない。
今のこの生活が『当たり前のモノ』だなんて思っちゃいけないのだ。

だってシアワセってやつは。
まるでこの花火の煙のように、ある日突然、あっけなく消えてなくなるコトがあるのだから。
それを身をもって知ってしまった私には、今のシアワセが大事で大切でたまらない。

ひとつでもたくさん楽しい思い出が欲しかった。
三花さんと晴が、大好きだから。