バケツに水をはって戻ってきた私に晴が手招きをする。
「これ、誰がやるかジャンケンしよーぜ」
晴が袋からつまんで取り出したのは、袋のド真ん中に入ってる大きな紙の持ち手のついた花火。
「これだけは公平にジャンケンだからな!!」ってひとり鼻息を荒くする高2男子に、若干引き気味の女ふたりがたじろぐ。

んだけど晴のコレには理由があった。
さっきから晴がみっともないぐらいはしゃいでんのは・・

「オレ、実は花火初めて」
「は??」
「晴くん、花火したことないの!?」
「うん。見たことはあるけど」
「「ええっっ・・」」

という事情があったためだった。

たぶん、晴は相当ほったらかされて育ってる。
だけど、晴のスゴイところはそれにいじけてないところ。普通に考えてみても、なかなかこうはいかない。

「それ晴がやっていいよ」
って言う私に、三花さんも静かにうなずいた。
「いいよ、晴くんがそれやりな」
「いいの!? ありがと!!」

そして。

三花さんが蝋燭にカチリと火をつけると、暗い庭に小さな灯りがポッとともった。
三花さんが満面の笑みでこっちを振り返る。
「さ、やろうか!」って。