素麵を食べ終わると、三花さん、今度は花火をやろうって言いだした。

「へへへ。実は買ってあるんだ」
どさりと縁側におかれた特大の花火セットに場が沸く。
「うわあーーーー! やりたい!」
「オレも!!」

庭におりた三花さんはすっごく楽しそうに蝋燭設置場所の草をむしりはじめた。花火なんて10年以上してないってはしゃぎながら。

三花さんほどじゃなけれど、実は私も花火は久しぶりだった。
坂川にいたころはアパート周辺に花火のできそうな場所がなかったから。
小学生の頃に、ママと『たかしさん』と3人でした花火が最後だと思うのだ。
8月の暑ーい夏の日暮れ。海辺で遊んでアイスを食べて、たかしさんがお土産に持ってきてくれた豪華な花火をしながらたくさん写真を撮ったっけ。
ママもたかしさんも笑ってて、あの夜がとてもとても楽しかったことを私は今でもよく覚えている。

『たかしさん』は毎日じゃないけど夜になるとうちに来る男の人だった。
私におみやげをくれたり、外にごはんを食べに連れて行ってくれたりする優しいたかしさんが私は大好きだった。
なのに、ある時からたかしさんはぱったりとうちに来なくなった。
さよならも言わずに消えたたかしさんがどうしちゃったのか、その時は全然わかんなかったのだけれど、次の人『ケンちゃん』が現れて消える頃には、彼らがどういう類の人たちなのかが私にもわかるようになっていた。

みんなママの恋人だ。
あのお医者さんも含めて私が知ってるだけでも3人はいる。
私の成長とともに彼らを家にあげなくなっただけで、きっとママにはほとんど切れ目なくそういう人がいたんじゃないかと思うのだ。
うちがシングルのわりに生活に余裕があったのは、たぶん、彼らがママを援助してくれていたから。たかしさんもケンちゃんも、太っ腹でお金にケチケチしない人だった。身なりだってよかったし、お金に余裕のある人たちだったはず。