ささっと水やりをすませた私は、佐山くんと一緒に居間へ入った。
三花さんちの居間はこぢんまりとした畳のお部屋で、小さなちゃぶ台とテレビと、後は古めかしい大きな和風のタンスがひとつ置いてある。

ちゃぶ台の周辺になんとなーく距離とって座った私たち。佐山くんは開け放たれた窓の近くに座り、縁側のほうへ顔を向けている。
三花さんは仕事に出てて家にはいない。
とりあえず佐山くんが何しにここに来たのかを確かめねばならない。

さっそく私は彼に声をかけてみた。
「佐山くんはなんで三花さんちにいるの?」
「オレ、おばちゃんの甥」
「へー」
なるほど、親戚か。
「三花さんに何か用?」
って聞いたら、佐山くんがすんごく気マズそうな顔をして私のほうを振り返った。
「用事っていうかーーーオレもしばらくここに住む。オヤジに追い出されて家に帰れないんだ」
「追い出されたの!? 家を??」
「そう。さっき連れてこられて置いてかれた」
「えええ・・・・!!!」

まるで他人事のようにそう言う佐山くんに私は唖然とした。
だって佐山くんは慌てるでもなく、悲しむでもなく、ごくごく涼しい顔をしてのんびりと庭を眺めているのだから。
「よく平気でいられるね。さみしくないの?」
「全然」
ケロッとして首を横にふる佐山くんは、家を追い出されたというのに全く何も感じていないようだった。