「え!? 頭、黒くすんの!?」
「うん。染めて」
ってブラックのヘアカラーの箱をポンと渡される。
「ふうーん。色変えるのか。・・これに??」
パッケージに印刷されたイケメンの黒髪と晴の金髪とをじっくり見比べてみる。その間に、晴は薄いビニールシートをぐるぐるっと身体に巻きつけて、あっという間にスタンバイ完了。
「早くやってよ」って急かしてくる。

「なんで!? いいの? ヤンキーやめるの??」
「オレはヤンキーじゃねえ!! だいたいヤンキーって何するヤツだよ、知らねーよ」
「ま、まあね・・」
言われてみれば私だってヤンキーってなんなのかよくわかんなかった。

晴の金髪は「バイトの時にナメられないようにするため」なんだって言う。悪そうに見えたほうが得が多いのだそうだ。
「バイトやめるの?」
「しばらくやんないだけ。4月にガッツリ働いたから夏までは学校行く」
「へー」
今年は4月の仕事が特にオイシくて、アレだけは絶対に外せなかった、と晴は言う。

中学時代は保健室で教頭先生に勉強を教えてもらってたのだそう。だけど高校では保健室登校なんてのは許されない。ある程度は学校にいかないと進級できなくなる。
どうやら出席日数をキッチリ計算した上で学校をサボっているらしい晴は、留年するつもりなんか更々ないようだ。
なるほど。なんちゃってヤンキーだったのか。
意外にシッカリしてんだな、って感心しながら私はコームににゅううっと薬剤を絞り出した。

頭を黒く染めた晴は別人。
「うっわあーーー誰!?」
「似合う?? 金髪とどっちがいい?」
「どっちもそれなりにいいよ。こっちも似合う!」
「へへへ」

まかないを抱えて帰ってきた三花さんの反応も上々だった。
「いいじゃない、晴くん! 可愛いわあ」って。