一花と晴

ふんわり優しい手が頭を滑ってく。
何度も何度も。

ああ、気持ちいい。

坂川のアパートではいつもママとお布団をならべて眠ってた。
眠りにつく前だとか、ちょっとした会話の合間に、こんなふうにママに頭をなでてもらうのが大好きだった私。

「ママ・・」って薄目を開けたら、晴が笑う。

「あれ? ママは?」
「いねーよ。オレだよ」

いつの間にか寝ちゃってた。
どーゆう流れで膝枕をやめたのかはわからないけど、晴と向かい合って寄り添うようにして横になっている。

「一花、メシ食いにいこ?」
「いかない」
「なんでだよ! 好きなもん食わせてやるからメシいこーぜ!?」
「・・ねえ、なんでそんなにおごりたがるの??」

ヘンなやつだなって思う。
お金だってないくせに。

「一花がメシ食ってる顔が見たいんだ。ただそれだけ」
そう言いながらぎゅうっと私を抱きしめる。
「あーまた勝手に抱きつく!! これするならチョコちょーだい!」
「チッ・・可愛くねえな!!」
ってガサゴソとポケットを探っていた晴がむっと顔を顰める。
「ーーーくっそ、もうない! ツケといて!」

渋々頷く私を晴がシッカリ胸に抱え込んだ。
そのあたたかさに思わずはあってため息がもれる。
晴の腕の中にいるとなんだか孤独が薄らいだ。

ママが死んでひとりになって。
寂しいのにも随分慣れたけれど、それでも時々発作がおこるみたいに、怖くて寂しくてたまんなくなることがある。
しーんと静かで、ひりひりするような孤独がまとわりついてきて。