私たちが入ったのは駅前のラーメン屋。
店内の混み具合はまあまあで、私たちはカウンターのいちばん端っこに通された。
店主こだわりのラーメンは一種類だけだから迷わない。餃子も1皿頼んで半分こする。

佐山がおっきなチャーシューを1枚、私の器にのっけてくれる。
「これ、あげる。今日のお礼」
ありがと、って見上げた佐山はびっくりするくらい穏やかで優しい顔をしていた。
小皿をとってくれたり、「辣油いる?」なんて気を使ってくれたりして、意外に面倒見のいい佐山はきっとそんなに悪いやつじゃない。

ラーメン食べながらつい口が滑って、お互いの身の上話をして、聞いた。
佐山のお母さんは、父親の浮気が原因で彼が5歳の時に家を出て行ったらしい。
それきり一度も会ってない。
お母さんが家を出ていくと、佐山の父親はドンドン駄目になった。
職と女を入れ替える度に収入と蓄えを減らしてゆき、佐山が小3の時、『ドン底住宅』の異名を持つあの公営住宅に移り住んだのだという。
以来、見たまんまの貧乏暮らし。

ーーーなかなかたいへんな人生だ。私なんかよりよっぽど苦労してる。
私の苦労なんてついこの間からだもん。