しばらくして、沈黙を破ったのは佐山だった。

「オレ、あいつが苦手でさ」
うつむいたままボソボソとしゃべりはじめた佐山に私は無言で頷いた。
「オレ、男だし。力だってあるし。ホントならあんな女に負けるワケなんかねんだけど」
「・・うん」
「なのに気がついたら完全にマウント取られて身動きとれなくなっちゃってて」
「・・うん」
暗ーい目をした佐山がはじめた独白に私は静かに頷くことしかできない。
「ヤル気なんか全然ねえのに、あの女に触られてるうちに身体がオレを裏切ったんだよ!! おまえこーゆうの、わかる!?」
「???」

正直、よくはわからなかったが。

けれども、身体と心の納得のゆかない『不一致』が佐山にとてつもないジレンマを与えたらしい、ということだけはなんとなくわかった。

「んであの女、勝手にオレのオレをーーー」
「も、もういい!!」

男の子が襲われるだなんて聞いたこともなかったけど、こういう被害もあるんだなあ、って。
尊厳を傷つけられるって点では男も女もない。
きっと一緒だ。辛いんだ。