私たちは後ろも見ずに、とにかく走った。
だってあのお姉さん、すんごく怖かったから。

けれども慣れないことしちゃったせいか、あっという間に息があがり、ヘナヘナと走れなくなった私。
「も、もうダメ。ちょっと休もう?」
小さな公園のすみっこにベンチをみつけて崩れるように座り込み、私たちはピチチと小鳥のさえずる長閑(のどか)な木陰で「はああ・・」とひと息ついたのだった。

「ああ、こわかった。あんた大丈夫?」
「・・・」

「ねえ・・・・」
「・・・」

「・・・」
「・・・」

実は私、さっきからずーっと佐山を持て余してる。
声をかけても上の空。ぼーっと呆ける佐山を、私はどうしたらいいかわからない。