ガチャガチャって鍵を開ける音がして、ぎい・・って玄関のドアが開く。

「「!!!」」

思いっきり背筋をのばした佐山がビッックーーッて立ち止まり、私は慌ててヤツの後ろに隠れ、その背中にしがみついた。

ち・・父親!? それとも女!? 
とっさに思った。できれば女のほうじゃありませんように、って。
だけどその願いも空しくーーー

「あらら晴くん、どこ行ってたの?」

玄関に現れたのは、例の女のほうだった。
たぶん30代くらいのひと。
恐る恐る佐山の後ろから顔をのぞかせると、彼女がこてんと首を横にかしげて私と目を合わせる。

「あなた晴くんの彼女?」
「ち、違います!! 頼まれてついてきただけ・・」
「じゃあ、お友達?」
「・・いや、友達ってわけでも・・・・ただの知り合いです」
「なーんだ、やっぱりね」
お姉さんが面白そうに佐山の顔を眺めまわす。
「あんた、彼女どころかお友達すらいないワケ? ねえ、まさかこの子に頼み込んでおうちまでついてきてもらったの??」
鋭く図星を突いてくるくるお姉さんの言葉に、佐山の背中が小さく丸まった。
「嘘やだ、ホントに!? あんたいくつよ?? アハハ!!」

・・と、容赦なく佐山を笑い倒すお姉さんは、肝の据わった迫力のある美人だった。

トラウマがどーのって言ってたのはホントのことのようで、冷や汗かいて黙りこくる佐山は下向いちゃったまま彼女になんにも言い返せない。
「やだあ、ビビっちゃって。晴くん、かっこわる! んでもまあ、仕方ないか。あんたそんな頭してイキってるくせに童貞なんだもんね?」

「・・・・(泣)!!!」

もう勝負にすらならない。お姉さんにいいようにバカにされる若造佐山。