ズルズルとひきずられて佐山の部屋まで連れてかれる。
入ってみれば、そこは他の部屋に比べたらわりとマシなお部屋だった。
服やマンガなんかが乱雑に床に放り投げられてはいたけれども。

部屋に入った佐山はすぐさまぴしゃりとドアを閉め、念のためもう一度耳をすませて外の様子を窺う。んでもやっぱりそれらしい物音はしなかった。たぶん今は誰もいない。
はあっとひとつため息をついてから、佐山はキョロキョロと部屋の中を見回した。で、部屋の隅っこに転がってた古ぼけたくまのぬいぐるみを拾い上げる。それをくるりとひっくり返して背中についてるファスナーをちーって開けると、モフモフの背中の中にはなんと通帳と印鑑が埋まっていた。

「大事なものってそれか」
「オレの全財産!!」

そのほかにも、なんだかんだといろいろリュックに詰め込んでから、佐山は私の手をシッカリと握りしめて部屋を出た。リビングを通り過ぎる時に、つないだ手にぎゅうううっと力がこもる。

そっか、ここが現場か。
リビングでテレビ観てたって言ってたもんね。
ずんずんと大股でリビングを横切ってく佐山にそおっと声をかけてみる。

「あんた、怖かったの?」
「全然」

そして。玄関まであと一歩、って時だった。