「おい」
バシ!って頭をはたかれた衝撃で目が覚めた。
「ん??」
今の感触はたぶん、ぺらっぺらの・・私のノート?

いつものごとく港のコンクリに寝っ転がって昼寝していた私。がばりと起き上がると、私のすぐそばにしゃがみこんだ佐山が私の全財産を記したノートを勝手にめくっている。
「わわわ、ひとのモノ勝手に見ないでよ!」
「だってここにほったらかしてあったんだもん」
すぐにホイと返してくれたけど、シッカリ中は見られてた。
「おまえ、200万も持ってんの? 結構金持ってんじゃん」
ニヤつく佐山に私は猛烈に腹が立った。
「ないよ、足りない! 200万なんてすぐ消えちゃう」

怖いのだ。
未来のことがわからなすぎて。
あと2年ここで暮らして、就職して、どこかに部屋を借りて引っ越して・・たぶん、のんびり安心していられるような額じゃない。

私は不信感でイッパイの目つきで佐山晴の黄色い頭を見上げた。
「アンタもしかして、カツアゲする気・・?」
「しねーよ!」
ちょっと金持ってるからって自意識過剰! と、罵られる。
犯罪行為には否定的。佐山はそれほど素行の悪くないヤンキーらしい。