港の白けたコンクリに寝転んでボーッと空を眺めてた。
が、天気が良すぎて顔がじりじりと痛くなり、むく、と起き上がった私はすぐそばに放ってあったペラッペラのノートを手に取った。一番最初のページに『300万』とだけデカデカ書き込まれてるこのノートは、私の財産簿なのである。

ノートと一緒に転がしてたシャーペンを拾って、『300万』からぴーっと矢印をひいて『三花さんに100万』って書き込む。
ゆうべやっと受け取ってもらえたのだ。私のこれから2年分の生活費を。
家賃、食費に高熱水道代、その他諸々の生活費は100万じゃ足りないんじゃないかって思うのに、これ以上は受け取ってもらえなかった。
それからまたひとつ、矢印をひっぱって、今度は『学費と引っ越し資金200万』って書く。
これは高校に納める諸々の費用と、2年後に就職して独立する時の引っ越し資金。

書き込んだ内容をしばらく眺めてみてから、私はぱたんとノートをとじた。
お金のことなんて、正直サッパリわからない。だって考えたこともなかったのだ。
全部、ママに頼ってた。
だけどママはもういない。