隣に座る男から逃げるように距離をとり慌てて三花さんのそばへ移動した私を、ヤツが腹立たしげに睨みつけてくる。

「晴くん」

私を背中に庇いながら、三花さんが不肖の甥っ子を静かにみつめた。
「相手の方が事件にはしないって言ってくれてるみたいだけど、晴くんのしたことは絶対に許されない犯罪よ。そんな子、うちには置いとけない」
三花さんの後ろから私も大きく頷く。
こいつはまず、自分の犯した罪と真摯に向き合わねばならない。相手が黙ってるからって罪が消えてなくなるワケじゃないのだ。今からでも遅くない。少年院にでも入ってその腐った性根を叩き直してもらうとよいだろう。

ところが。
ぶるぶると怒りに震える佐山が顔を真っ赤にして三花さんに嚙みついたのだ。

「違う!! 襲われたのはオレなの!!」
「・・ハア?」
「あの女がオレをユーワクしてきたんだよ、オレは悪くない!!」
彼がそう叫んだ途端、シラけた顔をした女ふたりが薄ら笑いを浮かべた。
「ーーーああ、ハイハイ。犯罪者が絶対言うやつね?」
「あんた・・反省しようとか思わないの?」

「ホントにオレはなんもしてねんだって!!」